福山市民、必読! 今井絵美子さん「群青のとき」
昨年末、福山市内の書店の店頭で平積みになっていた歴史小説「群青のとき」を購入しました。主人公は、福山藩主で、幕末に日本を開国に導いた阿部正弘。作者の今井絵美子さんが、福山市出身&在住なのを知って興味が湧き、先日、「ふくやま文学館」で行われたトークショーに行ってきました。
今井さんは、紫色のシックな着物姿で登壇。すっと伸びた背筋と、黒髪のボブカットがとてもチャーミングな方でした。講演には慣れておられる様子で、時折ユーモアを交えた、とても楽しいトークでした。お話の端々からは、文壇や画壇の幅広い人脈も伺えました。
冒頭から、今井さんは「本作は、何より福山の方々にぜひ読んでほしいんです。だって、みなさん福山に住んでいるんですから!」と、本作への並々ならぬ思い入れを語ってくださいました。
下の写真は、本作の帯に寄せられた、著名人のコメント。
トークショーでは、崔洋一さんと菊池仁さんのコメント全文を、今井さんが朗読されました。お二人とも、ほぼ絶賛されてますね。
備後福山藩主であり、25歳の若さで老中に就任。根回しや利害調整など交渉ごとに長け、おまけに美丈夫(ハンサム)。「日米和親条約」を結び、列強の属国になることを回避しつつ、日本を開国に導いた立役者。
‥‥こうした輝かしいキャリアにも関わらず、彼を主人公に据えた小説やドラマ、映画はこれまで皆無だったそうです。
なぜなら「地味」だから。
今井さんは、何度も編集者に本作の構想を持ちかけたそうですが、「立派すぎて面白みがない」と断られ続けたのだとか。今井さん曰く「歴史小説って、破天荒な人物の方が好まれるんですよ。その方が面白いから」。
そこで今井さんは、「闇丸」という架空の人物を設定。
立場上、自由には動けない正弘の、目となり手足となって動いてくれる《影の存在》として闇丸を設定したことで、物語に奥行きが生まれ、正弘の人物像にも深みを与えることができたそうです。確かに、この闇丸がいるからこそ、江戸の市井の人々の息遣いや、開国か攘夷かで揺れる社会の空気感が伝わってきます。施政者の視点だけでは、歴史の教科書と同じですものね‥‥。
トークショーでは、ご自身の簡単な経歴にも触れておられました。
画廊経営などを経て、30代後半で純文学を志すも、賞に恵まれず、50代になって時代小説に転向。そして「立場茶屋おりき」などシリーズものの時代小説の大ヒットで知られるようになりました。
これまで「東京に拠点を移したら」という誘いを何度も断ってきたそうですが、
「私は、二度と福山を離れません!」と断言しておられました。
「福山は食べ物も美味しいし、何より素晴らしい人情がある。私は本当に《人》に恵まれてきました」。
心の底から、地元・福山を愛しておられるのが伝わってきて、こちらまで幸せな気分になれました。
私も、縁あって福山市へ引っ越してきた身。
今住んでいる土地の歴史を、もっと知りたい!と思うようになりました。